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人工知能(AI)を活用できるプロセスを作る!AIを設計開発業務のパートナーにしてDXを推進する。

人工知能(AI)を活用したい!

皆さん、忙しいですよね?そんな時に「誰かがそばにいて仕事を手伝ってくれたらいいな...」なんてこと思ったことありませんか?そんな妄想をしているあなたのパートナーがすぐそばにいます。それがAIです!そんな時代が来たのです。この10年の間に急激にAIの活用が高まっているのはほぼ毎日のようにニュースやネットにAIを使った新しい取り組みや、新しい技術が世に送り出されていることが報道されていますので、とりわけ意識しなくても皆さんの耳にも自然に情報が入ってきていると思います。

私たちが日々お付き合いをさせて頂いている製造業でもAIの活用は広がっています。広がっているというよりもお客様が意識的に自ら率先してAIを活用しようと取り組んでおられると私たちは認識をしています。研究開発として中長期的にAI技術開発をされたり、DX推進、デジタル推進、AI推進という名前の付いた部署が増えたりしていますし、デジタルデータを使いたいんだけど、AIを活用したいんだけどISIDさん何か良いご提案ありますか、と直接お問い合わせを頂くことも多くなりました。

AIは産現場では活用されるも、設計開発現場では活用が進まない

製造業のデジタルデータ、AI活用の代表的なものに設備に取り付けたセンサーデータなどから波形の変化を分析することでいつ頃に壊れるかを予測して壊れてしまう前に対策を検討する「予知保全」の取り組み、製品の良いデータと悪いデータを予めAIに学習をさせ、エッジAIが搭載された高精度カメラを活用して品質管理の基準に当てはまらない製品を取り除く「品質検査の自動化」の取り組みなどがあります。他にも製造業でのAI活用事例はありますが、多くは生産現場(工場内)での取り組みが多い印象があります。

一方で設計開発や検証業務ではAI活用のニーズはないのかな...と思われるかもしれませんが実はそんなことはなく、弊社主催の設計開発領域向けのAI活用を紹介するイベントには多くの方からお申し込みを頂きますし、アンケート結果からも設計業務、検証業務でAIを活用したいという回答は多いです。設計開発業務にAIを活用したいと思っておられる方は多いのですが、設計開発にAIを活用するのが難しくなかなか取り組みが進まないというのが実情のようです。そこで我々もお客様と一緒に設計開発を含めたエンジニアリング領域で如何にAIを活用するかを考え、適用を進めています。

1:エンジニアリング業務に如何にAIを活用するかを考える

AIと同じく数値を用いたアプローチをする技術とは...CAE

設計開発業務でなかなかAI活用が進まない大きな理由をいろいろとヒアリングし議論をしてみると、多種多様な技術を組み合わせてより高い性能を導き出す創造的な設計開発業務にさらにプラスして、AI技術を理解して組み込むことがさらに難易度を高め、様々な知見やノウハウが必要になってくるところに原因があるようです。そんな設計開発領域のどこからまず取り組もうか?そう考えたときAIと同じく数値を用いたアプローチを行うある技術に目が留まったのです。そう、「CAE」です!

CAEComputer Aided Engineeringの略称で製品にまつわる様々な物理現象をコンピューター上でシミュレーションをすることで問題解決を図る技術になり、現在のモノづくりにおいては新製品開発の性能予測、既存製品の更なる高効率化、高信頼性化、設計合理化や市場不具合発生時の対応など様々な分野で用いられています。私たちもCAEに関しては設立当初から取り組んでおり、CAEに詳しく知見を持った技術者が多数在籍しています。CAE技術者が日々お世話になり、深いおつきあいをさせて頂いている多くのお客様が取り組んでいる検証業務でのAI活用にまず取り組むことで、沢山のユースケースを生みだすことが出来ました。

検証業務でのAI活用について代表的な取り組みを2つご紹介しましょう。

◆人の感性や感覚業務の数値化

検証業務の中で実際の試験(実験)で検証を行う業務があります。例えば自動車メーカーが試作車を作って実際に試乗をして性能を確かめます。その中の官能評価と呼ばれる分野ではその道の達人、いわゆる匠(たくみ)のエンジニアが過去の経験や勘に基づいた感性で乗り心地や操安性などをチェックします。感性は説明をするのが大変難しく、再現性も低いため希少な匠のエンジニアに頼るしかありません。そこでディープラーニングの技術をつかって車体の動的挙動から乗員の乗り心地を推定するAIを構築し、数値化します。数値化することでOK/NGの判断が見える化出来るようになり、これまで属人化していた人の感性による評価の知見蓄積や技術再現性が確立出来ます。

◆シミュレーションの高速化

シミュレーション業務にサロゲートモデルを活用します。サロゲートモデルとは従来行っていた物理シミュレーションモデルを代替するAIの技術です。従来の統計技術でサロゲートモデルを作る場合、モデルの入出力情報を適切に縮約しなければならないなど様々な制約がありました。それに対してAutoMLPoD(固有直交分解)、ディープラーニングといった新しい機械学習の技術を活用することで、計算をコンパクトにしつつ、現場のユーザーが求める情報を扱える近似モデルの構築が可能になったのです。それにより数日かかっていた流体解析や衝突解析などの大規模シミュレーションの計算時間を数分のオーダーに短縮出来ます。従来のCAEを使ったシミュレーションに加えて、サロゲートモデルでシミュレーションを実施することで検証業務の精度向上や時間短縮に繋がったのです。

2:シミュレーションの高速化 サロゲートモデル

ここで一つの副産物がうまれます。サロゲートモデルの活用を進める中であることに気づいたのです。"たくさん蓄積できたシミュレーションデータをAIに学習させる教師データに使えるのでは⁉" 設計開発業務のAI活用が進まない課題にAI教師データがないという問題があったのですが、ある程度ルール化してデータを貯めていくことでシミュレーション結果がAI教師データとして使えるという道筋も出来ました

エンジニアリングAI活用MAP

3:エンジニアリング領域のAI活用のユースケース

AIを活用して設計案を生みだす仕組みの実現に向けて

ここで、現在一番注目を集めているAI技術といっても過言ではない「生成AI」技術の活用例もご紹介します。生成AIを簡単に説明すると画像、音声、テキスト文章など様々なデータを基に新たな何かを生成してくれるディープラーニング技術を用いたAIになります。この生成AIを設計開発業務で重要なエンジニアのクリエイティブな業務に活用することが出来ます。具体的な例としてGAN(Generative Adversarial Network)というAI技術を用いると過去のデザイン案や3次元モデルデータを学習し、新たなデザイン案や形状案を生成してくれます。サロゲートモデルや最適化技術とうまく組み合わせたりすることでエンジニアの発想を超える新たなデザインや形状が生成されるかもしれません。現在巷には生成AI技術を使った非常に多くの応用事例が発表されています。今後設計開発領域にも適応出来るユースケースを増やしていきたいと考えています。

今回いくつかユースケースをご紹介しましたが現在研究中である最先端の取り組みとして、AI技術を組み合わせて設計案を生みだす仕組みの実現に取り組んでいます。Generative Design(ジェネレーティブデザイン)です。ユースケースとしてご紹介をした形状生成AIとサロゲートモデルを介して創出された設計アイデアに対して最適解探索により駆動することで、汎用性の高い設計案を生みだす仕組みが作れるのではと考えています。この一連の流れをシステム化することで最終的には自動設計の仕組みを作り上げるのが最終目標になります。今回はこのGenerative Designの詳細は触れませんが、近いうちにこちらのブログにも詳細を掲載したいと思います。

4Generative Designで検証中のワークフローイメージ

AIをパートナーにする設計開発の新しいプロセスを作るEngineering AI

設計開発におけるAIの活用は前述の通りユースケースも増えており業務効率化に繋がっています。しかしながら現在製造業が直面している世の中の大きな変化には従来の設計開発を大きく変えることが必要です。設計開発のやり方、プロセスを革新的にすることをお客様が求められています。冒頭に話のあったAIがあたかもパートナーのようにいろんな仕事を手伝ってくれたら...というエンジニアの想いの実現を目指し、今までの私たちの取り組みやソリューションを集約、融合させて新たに「Engineering AI(エンジニアリング・エーアイ)」ブランドを立ち上げ、設計開発業務を含むエンジニアリング業務におけるAI活用をさらに進めることにしました。Engineering AIは「エンジニアに提案するEngineering AI」をキーメッセージとして、エンジニアリング業務においてパートナーであるAIがエンジニアの判断を支援する様々な提案を行う仕組みの実現を目指しています。その仕組みを設計開発業務の新しいプロセスの一つにしたいと考えています。

5:エンジニアに提案するEngineering AI

今後のEngineering AIですが、「エンジニアリング×AI」に関わる分野について更なる強化を図ります。ISIDグループの枠にとどまることなく、既存のパートナー各社との連携や新しいパートナーとも積極的に提携を進めていく予定です。

ISIDグループはエンジニアリング領域にフォーカスをした多くのAIソリューションを駆使して、製造業の設計開発力の向上をご支援いたします。ご興味をお持ちのお客様、パートナー各社、AI関連企業の皆様、是非お気軽にお問い合わせください。

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